2023年7月からの新しい道路交通法の施行で電動キックボードの利用を想定したソリューションも。 地方都市が抱える空き家問題や人の移動問題を解決に導くプロトタイプが続々登場。
東欧人材向け日本移住プログラム「Hello, Yaponiya」や出雲進出を狙う市外IT企業向けコワーキングスペースの運営を手がける、官民連携で設立された株式会社People Cloud(本社:島根県出雲市、代表取締役:牧野 寛、読み:ピープル・クラウド、以下、People Cloud)は、共同出資を受けた民間3社の株式会社SAMI Japan(本社:東京都世田谷区、 CEO:牧野 寛、以下、SAMI)、モンスターラボオムニバス(本社:兵庫県神戸市、代表取締役:平石 真寛/ひらいし まさひろ)、株式会社e-Grid(本社:島根県出雲市、代表取締役CEO:小村 淳浩/おむら よしひろ)と共に、東欧から日本に招かれたITエンジニアによるハッカソン「Hack Izumo」の成果発表会となる DEMO Dayを、e-Gridの本社オフィスにて5月31日に開催したことを発表いたします。
「Hack Izumo」は、東欧の高度IT人材向け日本移住プログラム「Hello, Yaponiya」内で実施されたエンジニアイベントです。2023年5月31日に出雲市内外の企業経営者向けにDEMO Dayを実施することを目標に、事前に2人1組でチームを組み、出雲市が抱える複数の社会課題の中から、解決に向けて取り組みたいものを各チーム1つ選択してもらいました。Hello, Yaponiyaの参加者は東欧各国・各地域から集まっているため、チームビルディングやリサーチに関しては、それぞれのチームがリモートでのコミュニケーションで進めました。招聘事業で来日後、全3日間という日程で「Hack Izumo」に取り組み、SAMI Japanの出雲オフィスでの開発と日本語での資料作成を限られた時間の中で行い、東欧のITエンジニアの実力を最大限発揮しました。
SAMI Japanのプロジェクトマネージャー、ボリス・アファナセフがMCを務め、SAMI Japan/People Cloud代表取締役の牧野よりHello, Yaponiyaの事業に関する説明からスタートしました。その後、モンスターラボオムニバスの会社紹介を、代表取締役 平石 真寛(まさひろ)氏より、e-Gridの会社紹介を代表取締役CEO 小村 淳浩(よしひろ)氏より発表しました。
チームAが選択した課題は「車を持ってない人向けに、交通機関がない場所へ簡単に移動できるようにするサービスの開発」。日本海に面した人気の観光スポット日御碕の灯台は、水平線に沈む美しい夕日が見える場所として観光客から人気を博しています。日御碕へのアクセスは、市内のレンタカーや自家用車などを自分で運転するという以外には、バスを使うのが一般的です。ところが、ここでの課題は、日御碕から出雲市内に戻るバスの最終便は18:12とかなり早めで、3月〜9月の7ヶ月間の日没時刻まで滞在できないという状況があることです。
出雲市には、このような「便利な交通機関がないけど観光地として有名な場所」というのが多く存在するため、日御碕での課題だけでなく、出雲市全体が抱えている問題であるということを想定し、課題解決に挑みました。チームAが考案したのは、カーシェアリングと電動キックボードシェアリングを活用したWEBアプリケーション「ROUTES(ルーツ)」です。
「ROUTES」は、チームAが独自に開発しようとしているアプリで、既存の「公共交通機関」、「自家用車」、「徒歩」に加えて、「カーシェアリング」と「電動キックボード」も含めて最も効率が良い移動ルートを生成することができます。ルート生成時に、シェアリングカーのパーキングや電動キックボードのポート位置を検出し、出発地点から目的地点までの移動にかかる費用も同時に算出することができます。
さらに、彼らは「このような公共交通機関のアクセスの問題は出雲市のみにとどまらず、日本全体の現状を表している」とも示唆し、将来的には「ROUTES」を出雲市だけではなく日本全体で使えるサービスにすることを見据え、日本で普及し始めているカーシェアリングや電動キックボードシェアリングのサービスを利用することを提案しています。また、日本の電動キックボードに関する新しい法律が2023年7月1日に施行されることも考慮してアプリ開発が勧められており、アプリ内でルート生成するときのポートには電動キックボードだけではなく、シェア自転車も同様に利用できる仕組みになっています。
「ROUTES」の開発には、島根県発祥の開発言語であるRubyが効果的に使用されています。「ROUTES」は、地元の人々や観光客に便利で手頃な移動手段を提供することで、出雲の公共交通を改善する重要な一歩となる可能性を秘めていると言えるでしょう。
チームBが選択した課題は「出雲の空き家に新しい息吹を吹き込む方法」。出雲市には放置された空き家が多く残されており、出雲市は長年この問題と向き合ってきました。チームBからはまず最初に、空き家問題が解決されない原因として「空き家の所有者は家を積極的に売ろうとしていない(家への愛着や扱いにくさによる)、購入者は中古の家を購入したくないし、魅力的に見えない、家を売りたい所有者は、物件の住所を公に公開したくない」ということを提示しました。
そこで、チームBがまず注目したのが「物件の住所を公に公開したくない」という売り手と買い手両方の意見です。これを解決するために、物件の住所を公開せずに売り出せる仕組みを提案しました。それが、空き家の立地的な利便性や物件そのものの住みやすさを数値化したマーケットプレイスです。
このマーケットプレイスでは、空き家の住所を直接オンライン上に公開するのではなく、空き家がある地域を広範囲に青い丸印で地図上に表示します。空き家の評価点は、トイレやお風呂の数、部屋数など物件そのものの設備だけでなく、その立地条件とも密接に結びついており、交通インフラへのアクセスのしやすさ、幼稚園や学校との距離、最寄りのスーパーマーケットまでの距離などの要素も考慮して算出されます。
このように、チームBが開発した空き家マーケットプレイスの重要な特徴は、空き家の住所ではなく、評価点で取引ができる点です。これを実社会に実装すると、入居希望者や購入希望者(買い手)が空き家を簡単に評価することができ、好みやニーズに応じて最適な選択肢を選ぶことができるようになります。
チームCが選択した課題は「出雲市内の観光客移動をどうトラッキングできるか」。彼らは、人の移動をトラッキングする方法として、「人がよく訪れる場所」と「あまり人が訪れない場所」を可視化するための独自のソリューションを開発しました。これによって、「観光地ではないのに人が多く訪れる場所」や「観光地なのに人があまり訪れていない場所」を特定することができ、将来的には観光における問題点を具体的に洗い出し、解決策を提示することが可能になります。
このソリューションは、人の移動に関するデータを活用して人口密度に基づいたヒートマップを生成するアプリケーションと、データを収集するためのメディアアプリの運用という2つのパートに分かれます。ビッグデータ処理アプリケーションでは、SNSやモバイルオペレーターなどから収集したデータを分析し、観光地に訪れている人の密度に基づいて、ヒートマップを生成します。ヒートマップでは、そのエリアの訪問者の密度が高くなればなるほどマップが赤くなり、低いほど青くなるというシステムを構築しました。また、人が集まりやすい理由、もしくは、集まりづらい理由に関するレポートも、収集したビッグデータから生成することができます。
チームCは、より多くのデータソースを利用することで、観光客の傾向をより正確に把握できると考えており、現段階では手に入れることが叶わなかった地方自治体が保有する居住者のデータやモバイルオペレーターやSNSなどから得られるビッグデータを合わせて活用できるようにしたいと考えています。
さらに、既存のデータと合わせて、自分たちで新たにデータを収集していくためのシステムとして、出雲市の観光名所に関する情報を提供するメディアアプリの構築も提案しました。このメディアアプリでは、出雲市内の観光情報を自由に閲覧することができるほか、出雲市を訪れている他のユーザーと交流することが可能です。また、出雲市の観光名所にQRコードを設置し、メディアアプリと連携させることで、ユーザーはスマートフォンのカメラでスキャンしてメディアアプリのコンテンツを閲覧したり、マイページにQRコレクションとして訪れた観光地のQRコードを追加することができるようになります。これにより、さまざまな観光名所への訪問データを収集することを狙いとしています。
「Hack Izumo」では、有識者として、株式会社モンスターラボオムニバス 営業統括 杉原健司氏と株式会社イーグリッド ソフトウェア開発Div. 執行役員 永見純也氏に出席いただき、コメントをいただきました。
プロトタイプをこの2日間でしっかり作ってあるのと、ビジネスのことも考慮されている。チームAは、自家用車を持っていない人が何を考えているかについてしっかり推察されていて、その人たちに対するソリューションも素晴らしかったです。チームBも「売る側、買う側、客観的なプライシングを含めて評価をしてあげる」というアイデアが素晴らしかったです。僕の友人も不動産業を営んでいますが、不動産テックの一つのソリューションとして、協業できそうだなと可能性を感じました。出雲には地域交通に詳しいスペシャルな会社もあるし、この会社ともコラボレーションできそうです。両方ともこの課題は出雲市だけではなく、日本全国の地方が抱える課題であり、今後スケールしていくと思います。
永見氏からは、
出雲を盛り上げるために必要なアプリケーション。私も一技術者として、同じチームに入って開発したかったなあ、と感じました。
という感想とともに
なぜその技術を使ったのか。実際にコーデイングは何日かけてしたのか、テストコードを書いたのか。
という質問がありました。チームCからの回答は、
メディアアプリにはRuby on Rails、ヒートマップにはC♯を使用しています。その理由は、マイクロソフトが使用している言語ですでに機械学習での実績を多くあったからです。どちらもテストは時間的な余裕がなく未実施ですが、全てのコーディングは事前準備を含めて1週間ほどで書き上げました。
という回答を聞いて、感心している表情を見せました。
この度立ち上がった新会社People Cloudの出資者の代表3名が、プレゼン発表をした3つのチームそれぞれに対して、「テクノロジー賞」「アイデア賞」「デザイン賞」のいずれかを授与し、ギフトを贈呈しました。
チームAには、SAMI Japan代表取締役の牧野が「テクノロジー賞」を授与しました。
牧野は「テクノロジーの部分で、今の新しいサービスを繋ぎ込んででいて、ユーザーにとって利便性が高いサービスだと思いました。」とコメントしました。
チームBには、島根中央信用金庫の理事長 福間氏が「アイデア賞」を授与しました。
福間氏は「市内中心地の課題、空き家というのは急務の課題ですね。今すぐに使えそうなくらいの完成度で、目の付け所、アイデアがよかったです。」とコメントしました。
チームCには、出雲市 飯塚市長が「デザイン賞」を授与しました。
飯塚市長は、まず、「パズドラブリャーユ!」とチームCの二人の出身地ロシアの言葉で「おめでとう!」と伝え、「(その場所に)行かない理由を分析する上で参考になるデザインだったと思います。」とコメントしました。
最後にプレゼン発表してくれた東欧のエンジニアのみなさん、新会社People Cloudの出資者の代表の方々、本イベントをご観覧くださった企業・経営者の方々、SAMI Japanのイベント企画・制作チームと記念撮影をしました。
新会社People Cloudは、「出雲からIzumoへ」というスローガンを掲げ、一地方都市としてではなく、世界の人材から選ばれる出雲市になることを目指し、世の中に働きかけていきます。
Co-Lift、TeacherTeacherの監修の元、東欧のITエンジニアが子育てに悩める保護者に寄り添うアプリケーションを開発。
東欧人材向け日本移住プログラム「Hello, Yaponiya」と、 出雲進出を狙う市外IT企業向けコワーキングスペースの運営を両輪で活動。
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